クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
伊藤さんも長身だけど、葛城課長は更に背が高い。しかもいつもの仏頂面だから、迫力がすごくて。伊藤さんは腕時計をチラッと見てから、「じゃあ、また!」とペコリと頭を下げて行ってしまった。
一体何だったんだろう? と訳がわからなくて目を瞬いていると、葛城課長は眉を寄せてなぜかこちらをジイッと見下ろしてくる。
ニアミスのこともあって、カッと顔が熱くなる。彼の逞しさをこんな場所で感じるなんて。しかも見られているなんて恥ずかしすぎて、身体が震えてきた。
それでもここは会社。今は仕事中だから、公私混同は禁物だとドキドキする自分を叱りつける。
「ファイル、拾っていただいてありがとうございます……え?」
葛城課長が手にしたファイルを取ろうとすれば、ヒョイとそれは高い場所に移動する。手を伸ばさないと届かないけど、片手でファイルを抱えている今はそれが難しい。思わず眉を寄せて、課長を睨み付けてしまいました。
「課長! 意地悪しないでください」
「オレの言うことを聞けば返してやる」
「え?」
オレ? と葛城課長の口調に違和感を感じて見れば、彼はニヤリと唇の端を上げる。
「今日の営業事務課は一切の残業を認めない。死ぬ気で仕事を終わらせろ。そして、定時で終わったら地下の駐車場で待ってろ。車種は判るな?」
「え……」
チャリ、と私のスーツのポケットに何か入れた課長は、ファイルの山をカートに乗せてこれで運べと私ごとエレベーターに押し込んだ。
ポケットに入れられたのは……何かの鍵。地下駐車場? と頭を捻りながらも、必死に仕事と取り組み。何とか定時で終わらせることが出来た。