クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
繁忙期なのに残業なしで帰るなんて無茶振りも良いところ。だけど葛城課長は適材適所で仕事を割り当て、課員全員の仕事を残業無しで見事に終わらせた。
今日が金曜日の夜だからか定時で終わった瞬間みんな喜びの声が上がって、他の課の人たちから羨ましがられてた。
かくいう私も、定時で帰れるなんて半月ぶりくらい。ロッカールームでいそいそと支度をしていると、富永先輩に「もしかしてデート?」と勘ぐられて誤魔化すのが大変だった。
(課長が私と一緒に住んでるなんて知られちゃいけないもんね)
恋人でも家族でも友達でも無い男女が一緒に住むなんて、世間からすれば常識に欠けると言われても仕方ない。理由はなんであれ、葛城さんの評価や信用が下がるだけなのだから……。
それに、私が居たら葛城さんが恋人にしたい女性を家に呼べない。
たとえば、富永先輩みたいにクリスマスに一緒に過ごしたい人が出来たりとか……。
自分の存在がどれだけ厄介で迷惑なのかを改めて感じて、ズキッと胸が痛む。そこを手のひらで押さえながらも、鏡で見た自分の冴えない顔を叱りつけた。
(なに、暗い顔をしてるの! 笑顔、笑顔。下を向いてたら前がよく見えなくなる……美人じゃないんだから、せめて見苦しくならないようにしないと)
パチン、と頬っぺたを軽く叩くと、鏡の自分に向かって頷いた。
「頑張れ、私。大丈夫……私は独りでも生きていける! 私は強い! 大丈夫、きっと大丈夫」
誰も居なくなったロッカールームで、自分を励ますように呟いた。