クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
地下駐車場の車種はすぐにわかった。私は一度しか乗ったことがないけど、あの時の記憶が鮮烈で。
私が近づいただけでカチッと音がして、車のランプがパカパカと点滅したから驚き。でも、さほど待たずに遠目に課長の姿が見えて、弾む気持ちを抑えられなかった。
彼以外誰も居ないことを確認してから、手を挙げてついつい呼びかけそうになったけれど。
階段から降りてきた葛城課長の後ろに一人の女性の姿が見えただけでなく、その女性が課長に抱きつく様が見えて。しかも彼も足を止めて彼女の手を取り二人で見つめあってる。
どうしようもない痛みが胸に走り、二人が近づいて来るのに気づいて、慌ててそばの車の陰に隠れた。
どっどっど、と。心臓が嫌な音を立てて軋む。現実を見たくなくて瞼をギュッと閉じれば、二人が抱き合う姿が目に焼き付いて離れない。
(とうとう……葛城さんに恋人ができたんだ)
わかってたはずだった。彼が好意を抱かれたら本気だと言うことは。だから、いつかはこうなるんだと。こうなるのが正しい姿だと。
(私は所詮ペットだから……)
出ていかなきゃならない。いつまでも彼の好意に甘えていてはダメだ。
20日にお給料が出たら……役所を頼って何とか住む場所を見つけよう。どんな場所でも構わない。葛城さんのしあわせの邪魔になるよりはましだから。
二人に気付かれないようにここから抜け出して帰らなきゃ。私が居たら邪魔にしかならないもんね。車の陰から何とか脱出しようと足を踏み出しかけたところで、突然若い女性の声が響いた。