クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
どれだけキスを続けていたか、時間がすっかり曖昧になった頃。ようやく私を離した葛城さんが、きっぱりと言い切った。
「悪いが、私にはこうして将来を考える相手がいる。兄のしあわせを妬み、当て付けための結婚相手探しなら、よそを当たるんだな」
「……!」
お嬢様が息を飲んだのか、ヒュッと小さな音が聞こえてすぐ、カツカツとヒールの音が遠ざかっていった。
その音が消え去ってしばらくして、葛城さんは私を離す。膝から力が抜けた身体がよろめき、すぐに彼に抱き留められた。
「済まなかったな、巻き込んでしまった」
「い、いえ……」
真っ赤になってるだろう顔を見られたくなくて、俯いたまま首を横に振った。
「大丈夫、です。私はちゃんとわかってます……。自惚れたりしませんから安心してください。私は、あなたのペットですから……ちゃんと立場をわきまえてます」
言いながら、涙が出そうになって唇を噛んだ。
「今のは、あなたが断るのに必要なキスで。こんなの何の意味もないくらい、ちゃんとわかってますから」
それでも納得されないかな、と痛みを隠しながら無理に笑って、思い切って顔を上げた。
大丈夫、私は勘違いなんてしない。あなたの大切な人になれるなんて思い違いは……。
笑って、誤魔化せると思った。
なのに、なぜか葛城さんは痛みを感じたような。少し苦しげな顔をして私の頬に指を滑らせた。
「――なら、なぜ泣く?」
「え?」