クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
「な、泣いてなんていません……!」
たとえ本当に涙が出ていても、認めたくなくて否定した。瞼をギュッと閉じて、首を横に振る。
「私に泣く理由なんてありませんから……私は、泣いてなんていません」
意地になって否定し続ける。痛みや悲しみから来た涙なんて、要らないもの。
葛城さんには、ただ迷惑なだけだから。
葛城さんは何を思ったか、私をギュッと抱きしめて「すまない」と囁く。その謝罪はなぜか私をますます悲しくさせたけれど。もう涙を流すまい、と唇を噛みしめて耐えた。
「とりあえず、帰るぞ」
「……はい」
いろいろなことがあって感情がぐちゃぐちゃな私は、頭の芯が疲れきって大人しく助手席に座った。以前は存在すら知らなかったシートベルトを着用すると、黙って手元に視線を落とす。葛城さんは「帰る前に寄る場所がある」とだけ言い、その後は気まずい沈黙が満ちたまま車を発進させた。
一応誰かに見られては不味いくらいの頭は働いたから、会社の近くの道では顔を伏せておく。それについては葛城さんも何も言わず、慣れた様子で車を運転してほどなく予告していた場所に到着したようだった。
葛城さんがドアを開けて降りなさいと言ったから、彼に従って車から降りて後に着いてく。けれど、その先にあったお店に思わず声を上げそうになった。