クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
スマホを気まぐれに弄っていたら、葛城さんに訊かれた。
「その機種が気になったのか?」
「あ……いえ」
シャープな印象のデザインのスマホが多い中、柔らかいフォルムが優しくて。手に馴染みそうとは思った。
だけど、今の私には憧れでしかない。だから、そんなことを訊かれても“欲しい”ととらわれるのが嫌で、曖昧な言葉でごまかした。
スマホを持つのは夢のまた夢。きちんと働いて……どこか部屋を借りて。葛城さんにきちんとお世話になった分を返して……安定した生活ができるまでは無理だ。
そんなふうに考えていたのだけど、葛城さんは私が弄っていたスマホをじっと見てる。やがて、彼の番号が呼ばれてカウンターに向かった。
その間手持ちぶさたな私は、恐々ながらも興味津々にスマホを弄る。インターネットやメールだけでなく、アプリを入れればいろんなことができるってすごい! と感心した。
(写真まで撮れるなんて……電子マネーにテレビ……わ、ゲームまでできるんだ。すごい!)
こんなにも小さな機械でいろんなことができるなんて、本当に夢のようだった。
コマを動かすだけの単純なパズルゲームに夢中になり、ハイスコアの一万点が出る頃。葛城さんは紙袋を手に「行くぞ」と帰宅を促してきたから、名残惜しいながらもお店を出て車へ乗り込みアパートへ帰った。
その前にチョコのお迎えに佐藤さん宅へ向かうと、珍しく二人揃ってるからか奥さんが興奮気味に耳打ちしてきた。
「いよいよ葛城さんも決意を固めたみたいね、頑張るのよ夕夏ちゃん。女は根性だから」