クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
「あ、ありがとうございます!でも……こんな高価なもの……私には」
「夕夏」
もう一度、葛城さんは私の名前を呼ぶ。その時の彼はなぜか、一瞬だけ熱を孕んだような……そして、何とも言えない揺れる瞳をしたのは気のせい?
「おまえは」
どきん、と心臓が跳ねた。彼の瞳が切なそうな色を帯びたから。その理由を彼は今から告げる――緊張から身体が震えてくるのを感じた。
その先を、聞きたいような。聞きたくないような……おかしな気持ちで逸る心臓を押さえていると、彼は一瞬顔を歪める。
そして、何度か躊躇い――こう口にした。
「おまえは……オレのペットだ。だからいつでも居場所が判るように持っておけ」
「……っ」
空を飛びそうなくらいに嬉しい浮き立った気持ちも、葛城さんのひと言であっという間にしぼむ。
なのに。
「夕夏」
葛城さんの指が私の頬を撫でる。その呼び方が甘い、と感じる私も大概末期なのまかもしれない。
葛城さんの手が私からスマホを奪い、そばの棚にそっと置かれる。唇をなぞるイタズラな指は、私の唇を開くとその中にそっと忍び込ませる。
どれだけ、そうしていただろう。ようやく指が抜かれた後、唇の端から唾液が流れる。葛城さんはそれをぺろりと舐め、そのまま唇を重ねてきた。
「ん……っ」
そのまま彼は私を壁に押し付け、性急に身体に触れる。何だか焦りを感じるのは、たぶん私の気のせい。
「……勝手にどこかに行くな」
そんな葛城さんの小さな囁きも、きっと都合のいい夢なんだ――。