クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~



あまりに唐突な出来事で、目を見開いた。


(なぜ、キスをするの? 私のことが嫌になったんじゃないの?)


混乱気味の頭は、すぐに真っ白になる。もう何度したかわからない程のキスは、彼にとって私を思いのままにする一つの手段。


「んんっ……」


どれだけ長い時間彼に唇を貪られていただろう。地下駐車場でした時よりも濃い、熱いキスで翻弄され続けた結果。膝がガクガクと震えて腰が抜けてしまった。


ようやく解放された時には自分で立って居られず、ずるずるとその場で座り込んでしまう。すると、葛城さんはそんな私を抱き上げるから。怖くなった私は、慌てて彼にしがみついた。


「しっかり掴まっておけ」


上機嫌に聞こえる声で葛城さんは私に告げると、そのまま階段を上がり慣れた様子で入ったのは……彼の部屋だった。


そっとベッドに下ろされ、コートがシワになると気にする前に葛城さんに脱がされる。「自分で脱ぎます」と主張しても聞いてもらえない。


けれど、この状況と体勢。そして今は夜。嫌な予感しかしない現実に、私は何とか脱出しようと試みた。


「あ、あの……夕食を作らないと」

「後でいい」

「でも、食材を冷蔵庫に入れないと……悪くなってしまいます」

「玄関は冷蔵庫並みに冷えてるから問題ない」

「でも……あの! わ、私……ちょっとしたいことが」

「待てない」


何なんでしょう、このわがままっぷりは。あきれながらも最後とばかりに要望を伝える。


「なら、せめてシャワーを……」

「却下だ」


そんな理不尽な! と叫びたい私の手足を、葛城さんはベッドに縫いとめた。


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