クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
ペットでただの居候。厄介者に過ぎない私が伝えるなんて、図々しいかもしれない。
だけど、いつ葛城さんのそばから離れるかわからない現状。この感謝の気持ちだけは、彼に伝えておきたかった。
「私は……」
心臓がどきどきして息苦しい。膝が震えて彼を見るのも恥ずかしい。けど、頑張れ! と自分を叱り励ます。
葛城さんは苛つく様子もなく私の言葉を待ってくれてる。そうだ、いつだって彼はこうやって私をちゃんと見て言葉を受け止めてきてくれたんだ。
深呼吸して気分を落ち着けてから、胸の前で組んだ拳を握りしめて勢いよく顔を上げた。
「私は……あなたのそばにいるだけでしあわせですから。なにも要りません」
笑顔で彼を見上げてそう告げた。 あくまでも控えめに伝えたつもりだった。
なのに、なぜか葛城さんの眉間にシワが寄っていく。不機嫌そのものの彼の纏う空気を冷たく感じて、たちまち気分が萎んでいった。
(やっぱり……迷惑だったんだ。ただの気まぐれで拾ったペットからそんなこと言われたら……気分が悪くなるよね、やっぱり)
アパートへ帰る車の中では重苦しい沈黙に包まれる。葛城さんは目の前を睨み付けながら、話しかけるなオーラを彼から痛いほど感じた。
(ご飯作ったら……部屋に引っ込んで部屋を探そう)
昨日貰った賃貸情報誌は何冊か読んでおいて、気になったものには印をつけた。早く出ていく算段をつけないと……。と、重い気持ちでアパートの玄関に上がった瞬間、いきなりドンッとドアに身体を押し付けられる。
彼をそこまで不愉快にさせたかと悲しくなった刹那――突然、葛城さんが噛みつくようなキスをしてきた。