クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
微かに残った記憶が夢に出てきた。
しあわせな、夢。
お母さんが大切なひとと笑いあってる夢。
一度だけ、お母さんは「彼」と私を逢わせてくれた。「彼」は厳しい顔つきをしてたけど、私に向かって優しく笑って。頭を撫でてくれた。
“こんにちは、夕夏ちゃん”
大きな手のひらはあたたかくて、とても照れくさくて。でも……嬉しかった。
「彼」からふと感じたのは、ミントの薫り。まだ幼い子どもだった私には良さがわからなくて、ただ臭いとしか思えなかったんだった。
ミントの香りに包まれたしあわせな微睡みから目覚めると、葛城さんが私を抱きしめたまま目を瞑ってる。
(久しぶりに見たな……あの夢を)
偶然にも葛城さんがいつも纏うミントの香りがきっかけで、思い出したのかもしれない。
彼はたぶん寝てるだろうと踏んで抜け出そうとすると、逆にがっちりと腰を掴まれた。
「何をしてる?」
「あの……喉が渇いたのでお水を……」
寝てたんじゃないの? と疑問に思いながら答えれば、彼は身体を起こして「待ってろ」と言う。そんなの悪いと動こうとすれば「身体を労れ」と強引にベッドに沈められた。
「葛城さ……ッん!」
顎を掴まれたかと思うと、深い口づけを受ける。すっかり馴染んだ感触に唇を開けば、そこから流れ込むのは温い水。コクリと飲み込むと、離れた彼はまたコップから水を含むとキスをしてくる。口移しなんて恥ずかしすぎる行為に、私が抗議してもどこ吹く風で馬耳東風状態だった。
ついでとばかりに更にキスをされ、息も絶え絶えな私に彼は肉食獣の如く襲いかかってきた。