クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
「親の夢でも見ていたのか?」
すっかり疲れはてた私を、葛城さんはお風呂に入れてくれた。
一緒に入浴、というありがたくないシチュエーションですが。
うとうとした私は、ハッとなって彼を見上げる。なぜ? と目で問いかければ、彼はあっさり答えてくれた。
「“お母さん”……と、呼びながら笑ってた」
葛城さんは私を前に抱えたまま、お湯の中で身体を密着させてくる。滑るように頬を撫でられ、囁いた。
「しあわせだったんだな。なら、おまえの母は素晴らしいひとだった。どんな生活だろうが、子どもを笑顔にできる親は最高の親だ」
初めて、だった。
お母さんを認めてくれる言葉を聞いたのは。
(もしかして私のお母さんを知っていてそう言うの?)
なんて勘繰りは、今はできない。
きっと葛城さんは、私を認めてくれた様に私のお母さんも認めてくれた。不義の子を産んだと責められ詰られ軽んじられ続けたお母さんを。
「……っありがとう……」
私は、思わず彼の手を取ってそれを頬に着ける。ただただ、嬉しくて静かに涙を流す私を、彼は黙って抱きしめ続けてくれた。
そして、ようやく私が落ち着いたころ。彼はポツリと溢した。
「……正直な話、羨ましいと思う。実家にオレの居場所は無かったからな」
「……葛城さん?」
まさか、彼が自分の身の上話をしてくれるなんて。信じられなくて、思わずキュッと彼の指を握りしめた。