クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
危ないから送るよ、との加藤さんの申し出を断る最中、スマホに富永先輩からのメッセージが入った。
“今日の結果は明日教えるね。聞いてビックリしないでよ”
“ビックリって。どうかしましたか?”
“どうやら圭介と結婚することになりそうだから”
結婚……。
私とは縁がない言葉に、画面をタップする指が止まった。
ジッと液晶画面を見つめる私に、加藤さんが「どうしたの?」と覗こうとするから、慌ててスマホを隠してひきつった笑顔を向ける。
「とにかく、詳しく知りたいなら本人に訊いた方がいい。うじうじするより、絶対いい結果になるからさ」
パンパンと背中を叩かれ、励まされたとわかるけど。富永先輩の報告にどうも気落ちしてしまう。
けれど、祝福しなきゃと無理に指を動かして“おめでとうございます”とだけ送り、そのままスマホの電源を落とし、バッグに放り込む。
いつも通り自転車で帰宅した私を出迎えたのは、予想以上に不機嫌な葛城さんだった。
なぜか、玄関で仁王立ちしていた彼を見て身体が強張ったけれど。“ただいま”はふさわしくないから、
「遅くなってごめんなさい……夕食は今から支度をします」
と頭だけ下げて脇を通り抜けようとしたけれど。
突然、手首を掴まれて彼に詰問された。
「こんな夜遅くまでどこに行ってた?」
「……ちょっと寄り道しただけです」
ただのペットなのだから、安全を気にすることもないのに。私の自虐的な笑みを見た葛城さんは、不機嫌そうに眉間にシワを寄せる。掴まれた手が緩んだからすぐに部屋に駆け込み、三辺さんに連絡するためにスマホを立ち上げた。