クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~


今日の出勤には、ちょっとした異変があった。


いつもは私より遥かに早く出勤する葛城さんが、チョコの散歩から帰って来てもまだ家に居たんだから驚いた。


朝ご飯を一緒に食べるなんて、いつ以来だろう。けど、気まずくて会話なんて弾むはずもなく。黙々とご飯を口に運んでいると、おもむろに葛城さんが口を開いた。


「今夜は予定があるのか?」

「え……あ、はい」

「そうか」


たったそれだけ。


一体何なのかと首を傾げながらも、やっぱりペットには無関心なんだなと悲しくなる。


(昨夜はたまたま早く帰ってたからちょっと気になっただけだ、うん……無関心はむしろ喜ぶべきだよね)


近ごろ葛城さんは私になにか言いたげでありながら、時折上の空の時もある。きっと大切な何かがあるんだと感づきながら、それはきっと自分に関係ない……と言い聞かせてた。


もしかすると、葛城さんはようやく新しい恋を見つけたのかもしれない。三辺さんが退職して約2ヶ月――気持ちを切り替えることが出来たのだとしたら、私は喜ぶべきだ。


(……アパートの契約を急ごう……あの物件なら即入居可だから……明日仮契約をして、今度のお給料が入ったら……本契約にしよう)


幸い会社が保証人になってくれるし補助も出る。だから問題ない。


早く、早く葛城さんから離れなきゃ。 みんながしあわせになるためには、私は不要な存在でしか無いんだから。


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