クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
「やっほ~加納ちゃんおはよう~!」
朝一にぎゅむ、と抱きしめてきたのは富永先輩。ぎゅうぎゅうとかなり強く抱きしめられたから、窒息寸前で助け出されたのは有り難かった。
「こら! 自分の身体を考えて行動しろ。腹を圧迫すんな」
「大丈夫、大丈夫! ちゃんと考えているから~心配症だなぁ、圭介は」
アハハ、と恋人に明るく笑う富永先輩はずいぶん体調が良いようで安堵した。
「で、で。聞いて加納ちゃん! アタシね~できちゃったみたいなんだ」
「は?」
できちゃった? 何がと首を捻ると、富永先輩が私の肩をバンバン叩いて地味に痛い。
「もう、決まってるでしょ? 赤ちゃんだよ、赤ちゃん! 今7週目でさ、秋には生まれるって!」
「赤ちゃん……」
おうむ返しで呟いた私は、我ながら情けないほど動揺してた。けど、何とか笑顔を作って「おめでとうございます」とお祝いを告げた。
だけど、それ以上しあわせな二人を見るのは耐えられなくて、「お茶を淹れてきますね」と給湯室に逃げた。
(……やだ……私、妬んでる……富永先輩のこと)
クリスマスに同じ様に心を通じあわせ、同じように過ごしたのに。どうしてあの二人と私たちはこんなにも違ってしまったんだろう?
私だって、しあわせになりたかった。
大好きな人の子どもが欲しかった。
ずっとそばにいる権利が欲しかった。
……家族に、なりたかった。
(でも……きっと私には無理)
目元を拭いながら、みんなの為にお茶を用意した。