クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~



「真理さんの義姉(あね)として、彼女のしたことを申し訳ないと思う。けれど、今あなたたちに必要なことは話し合うこと。勇気を出して、きちんと彼と向き合いなさい。二人の関係が終わるにしろ、続けるにしろ。このままでは後悔するだけよ。わかった?」


「はい……」


三辺さんのキツイ言い方はどこか懐かしい。彼女は基本的に優しかったけど、甘くなく厳しい面もあった。それは私のためだと理解してるし、今でも感謝してる。


でも、と私は思う。


どうしても、一つだけ確認したいことがあった。


「あの……三辺さ……桜井さん」

「三辺のままで良いわよ。それで?」

呼び直した私に苦笑した三辺さんは、先を促した。


いざとなれば、やっぱり躊躇う。


“葛城さんの想いに気づいてましたか?”――と。


私が訊くにはあまりに関係がなさすぎて。


未だに迷う私に、三辺さんは「いいから何でも訊いて」と優しく言ってくれる。


この機会を逃すと二度とチャンスは訪れない。数度深呼吸をした後、思い切って顔を上げた私は彼女に訊ねた。


「あの……あなたは……葛城さんの……気持ちは……気づいてましたか?」

「ええ」


はっきりと、三辺さんは肯定した。


「智基が私を見てたのは知っていたわ。告白みたいなものも二度されたけれど、私は断った……」


告白を二度もされた、という事実にショックを受けた。でも、と三辺さんはどうしてか私に笑みを向ける。


「当然よ。だって、あくまでも彼は本気でなかったんだもの。彼は、憧れのひとと私を重ねて想いを募らせていただけ。
だけど結局紛い物……偽物の感情だから、醒めるのも早かったはずよ」

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