クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
「憧れの、ひと……?」
今の今まで全く知らなかった存在を呟くと、三辺さんはにっこり笑う。
「少なくとも、あなたに関わりがあるひとね」
「……それは」
一体誰ですか? と訊ねようとした私の言葉を遮るように、三辺さんは言葉を被せてきた。
「そうそう。おばあ様がまたあなたのお茶を頂きたいとおっしゃってたわ。“お若いのにしっかりなさってる。あなたも見習いなさい”と叱られてしまったの」
ぺろっと舌を出す三辺さんは、いたずらっ子みたいで。唖然とする私を見て満足そうに笑った。
「おばあ様?」
「気分が悪い時にあなたに助けていただいたそうね。ありがとう。私からもお礼を言わせて」
……気分が悪い時に助けたおばあさま……お茶……。
そのヒントを並べられれば、思い浮かぶのは一人。
「たしか……如月 風花さんとおっしゃる方、でしたよね」
「そう、その方が私の母方のおばあ様よ。出来ちゃった結婚だから未だに反対されてるの」
苦笑いをした三辺さんは、眉を下げて困ったわねと呟いた。
「如月家はわりと古くから続く、末端とはいえ華族の血を汲むお家ですもの。おばあ様の矜持が許さないのでしょうね」