クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
閉店ギリギリまで熱心に見ていたせいか、お店を出た時に何気なくスマホを見て驚いた。
着信33件。全て葛城さんだった。
(なんでこんなに?ペットが思い通りにならないから怒ってるだけ?)
不思議に思いながらも、大したことないとたかを括って自転車で帰宅した。
けれど、その対応は誤りだったと直ぐ様後悔する羽目に陥る。
帰宅したところで、また葛城さんが玄関で待ち構えてた。
(ペットだから……だよね。心配するのは)
「遅くなってすみません。ちょっと話し込んでしまいまして」
一応、心配をかけたなら謝らないと。深々と頭を下げて心配しないでください、と告げたのだけど。
葛城さんがすぐそばまで来て、不思議なことを訊いてきた。
「……そんなに伊藤が好きだったのか?」
「え?」
「だが、伊藤は富永と結婚し子どもができた。次は加藤に乗り替えるつもりか」
葛城さんが何を言っているのか、本気でわからない。
日本語を話してるはずなのに、彼の喋る言葉の意味を理解するには私の頭が足りなくて。だから、私は本気で彼に問いかけた。
「あの……おっしゃる意味がわかりません。伊藤さんを好きだとか……どうしてそうなるんですか?」
私が何気なく葛城さんを見上げると、背中にゾクッとしたものが走り抜ける。
彼の瞳に、ほの暗い光を感じて。感情がない人形のようでいて、反対にどろどろと熱いマグマのような煮えたぎるものが内包されているように感じた。