クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~



「……葛城さん」


腕の拘束が緩んだから、私は葛城さんから離れて体を起こす。そして、まっすぐに彼と目を合わせた。


「あなたが実家から距離を置きたい気持ちはわかります……でも、それを抜きであのひとを見てくれませんか?」

「……なぜだ? 俺がそうする必要など……」


やっぱり、頭から否定してきた。いかにも不愉快だと言わんばかり、と眉間には深いしわが刻まれてる。

纏う空気も冷たさを増して、苛立ってると一目で解る。


「あなたが不愉快に思うのも仕方ありませよね……ただのペットのくせにでしゃばり過ぎだ、と」


ピクリ、と葛城さんの眉が跳ねた。怒気を孕む空気に身体が強張りそうになるけど、勇気を奮い起こして彼を見据えた。


「だからこそ、です。私は……少しでもあなたの為になることがしたいんです。
押し付けだし厚かましいのもわかってます。でも……

私は、あなたにしあわせになって欲しいんです。
桜井さんは……打算抜きであなたのことが……」


その言葉をきちんと伝えよう、彼のことを想うなら、と。そう思うのに……胸がさざめいて唇が戦慄く。キュッと唇を閉じて軽く噛みしめた後に、躊躇いを押し退けて告げた。


「あなたのことを……ちゃんと想ってらっしゃいます。ですから……彼女のことを、一人の女性として見てあげてください」


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