クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
あ、やっぱり変なことを言ってしまったんだ! と顔から血の気が引いていく。
人付き合いが苦手であまり人と深く関わってこなかったからか、どうも距離感がわからずにヘマばかりしてしまう。焦ってすぐに頭を下げた。
「ご、ごめんなさい! 変な……いえ、失礼なことを」
「いいえ……そんなことはありませんわ」
必死に謝る私に、如月さんは優しい言葉を掛けてくれた。それだけでなく、意外なことを訊ねてこられた。
「……加納さん、よければあなたのお母様のお名前を教えていただいてよろしいかしら?」
「え……あ、はい。母の名前は加納 千夏……です。千の夏と書いてちか、です」
「千夏……」
その名前を聞いた如月さんは、ギュッとまぶたを閉じて両手を胸の前で握りしめる。そして、ああ、と吐息をこぼした。
ややうつむき気味の彼女の目尻から――涙がこぼれ落ちる。
唐突な出来事にどうしてよいかわからずにいると、震える声で如月さんがこう告げてた。
「千夏は……加納に嫁いだわたくしの長女が産んだ孫娘……。20年前に行方不明になっていたのです」