クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
「クビになった理由は?」
「……」
当然ながら訊かれる内容への返答を、私は躊躇ってしまった。用意した答えは一つだけだし、真実を告げたところで不採用には変わらないのに。
肩が震えたのを気付かれませんように。そう願いながら、立てた膝を両腕で抱えて俯いた。
「私が……誘惑したからだ、と」
「君が? 誰をだ?」
やはりそう追及されるんだ、とグッと下唇を噛み締める。痛みで涙が滲みそうになった。
「……お店の……息子さんを」
震える声をなんとか絞り出すと、抑えようとしてきた微かな震えが止めようもなくて。強く強く瞼を閉じる。力一杯膝を抱えて、なるべく葛城さんから離れるように隅に移動しようとした。
けれど、それは叶わなかった。
突然後ろから伸びてきた腕がお腹を回り、がっちりと抱えられてしまっていたから。
「か、葛城さん……?」
ビクッ、と一瞬身体が跳ねた。彼の腕で抱きしめられたと気付いた瞬間、一体何が起きたのかわからなくて頭が真っ白になった。