クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
「明日、なにか予定はあるか?」
「え……はい。午前中にちょっと出掛けます」
すっかり日常になった夕食の席で、葛城さんは私に予定を訊ねてきたからそう答えた。
“これから隠し事はするな”とあの話し合いで彼に言われたら、嘘をつくつもりはない……けれど。明日の用事の内容は葛城さんに話すのをためらう。
あくまでも私の勝手な思惑で組んだ予定だから、彼の与り知らぬところで終わらせたいんだ。
話すべきかどうか迷ううちに、葛城さんは「そうか」とだけ呟いて、大根を口にした。
「……うん、美味いな。味が染みた大根も悪くない」
「葛城さん、食べすぎですよ。他の具もちゃんと食べてください。栄養が偏っちゃいますから」
今晩は葛城さんのリクエストでおでん。最近は大根が彼のマイブームのようで、2本ぶんも厚切りにして入れてます。
他にはもち巾着と卵がお気に入りの様子。それを食べながらちびちび晩酌するのがお好きなようで……ちょっとだけおじ様みたいで笑いが込み上げる。
「……笑うな。これが最高だから仕方ないだろ」
ふて腐れながらも絶えずおでんをつつき、冷えたビールをあおる。こんな姿はきっと他の誰にも見せないんだろうな……と思うと、キュンと胸が鳴りしあわせを感じる。
高級レストランでワイン片手に綺麗な夜景を見るより、この方が私たちにはずっといい。
彼との離別まであと約1ヶ月……許されるその間に、葛城さんとの時間を何より大切にしたいと思う。
そんなふうにしみじみ思う私は、葛城さんから意外な誘いを受けた。