クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
翌日、三辺さんや曾おばあさまと待ち合わせて向かった先は――葛城さんの実家だった。
三辺さんは桜井の跡取りと結婚するから、分家すじの葛城家とは姻族(婚姻による親戚)になる。そこで、挨拶ついでに私も連れていって頂くというのはあくまでも表向き。
私の一番の目的は、葛城さんのご家族に会うことだった。
曾おばあさまは私をきちんと血縁と紹介して下さるという。如月の名前をあまり利用したくはないけど、現当主の母にあたる曾おばあさまの手前、無下には扱われないだろう。
何も後ろ楯のない見知らぬ小娘が乗り込んだところで、門前払いされるか通報されるのがおち。心苦しいし厚かましいけど、曾おばあさまと如月の名前を使ってどうにか葛城家の方と話が出来たら……と考えた。
運転手つきの高級車に乗って着いた葛城家は、高級住宅街のなかに広大な敷地を持つ瀟洒な洋館だった。
三階建てのお屋敷は歴史を感じさせる趣きがあり、庭園もヨーロピアンガーデンふう。電動で開く門やバトラー(執事)なんて生まれて初めて見るものばかりで、緊張感が高まりガチガチになる。
一張羅とも言えるスーツを着込んではいるけれど、場違いな自分が恥ずかしくなるほと趣味がよく、かつ豪華絢爛な玄関ホールで出迎えてくださったのは、女主人である弥生さんだった。
「まあ、ようこそいらしてくださいました。わたくしが妻の弥生でございます」
もう60を過ぎてるだろうに、弥生さんは紅いワンピースをすっきりと着こなし、緩く結い上げた栗色の髪が似合う若々しいお方だった。