クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
ふわり、と空気が動いて、頭に微かな重みを感じる。
「……頑張ってきたんだな」
ただ、ひと言。葛城さんはそう言っただけ。
けれど……
その暖かな眼差しと微笑みが、肌を通して感じるぬくもりが。そして、労る優しい声音と、包み込まれるような空気が。すべて私を肯定してくれていて。
思わず、ぽろりと涙がこぼれた。
「……だが、あまり気を張りすぎるな。他人(ひと)にもっと頼っていい。おまえのそれなら、誰もわがままとは言わない」
「……っ」
なぜ、この人はいつもいつも、こんなにも欲しい言葉をくれるんだろう。
今までどれだけ望んでも与えられなかった言葉もぬくもりも……しあわせも。すべてこの人がくれたんだ。
「……ありがとう……ございます……っ」
みっともないけれど、またあふれた涙は止まることを知らなくて。葛城さんがさりげなく私を隠しながら、人気のない場所に移動してくれたことも気付けなかった。
「……おれが高校の頃に入ってた部活は、映画研究部だった」
気分が紛れるようにと考えたのか、葛城さんが話してくれた内容が予想通りと言えば予想通りで。思わず私は笑っていた。