クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
「そろそろ腹が減ったな」
風が冷たい、と感じる頃には既に日が暮れていて。空が藍色に染まってた。
それもそのはずで、時計はあと少しで5時になる。あれこれ話しているうちに、いつの間にか時間が過ぎていたみたい。
「もうすぐ閉園だし、出るか」
「はい」
私が同意すると、葛城さんは「ほら」と手を伸ばしてきた。一体なんだろう? と目を瞬いていると、彼は焦れたのか私の手を取った。
「……やはり、冷えてるな」
ギュッと大きな手に自分の手が包まれて、胸が高鳴る。真冬のひんやりした空気が、火照る頬を程よく冷やして心地よかった。
振りほどく気にはなれず、かといって自分から握り返す勇気も持てない。そんな中途半端な気持ちのまま、私は車まで葛城さんと手を繋いだまま歩いていった。
「夜は任せろと言っておいたが、晩飯は食べたいものがあったりするか?」
「え、いえ……」
車の助手席に押し込められてすぐに訊ねられ、急いで“何でもいいです”と返そうとして、一瞬だけ我に返る。
“わがままを言え”と、葛城さんは言ってくれた。今もそのつもりなら、遠慮はかえって失礼になる。なら……と、私は急いで付け足した。
「あの……和食……がいいです。あまりこってりしたものの気分ではないので……」
どきどきしながらも、彼に希望を伝えてみた。今までだったら無視されていたことも、彼ならきちんと聞いてくれる。そんな安心感もあった。