クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
ふわり、と空気が動いて。後ろから抱きしめられたと知った。
「……そうじゃない。おまえに謝って欲しいわけじゃないんだ」
回された腕に力が籠り、より強く抱きしめられる。私の耳元に顔を寄せた彼は、小さな声で呟いた。
「……怖かったんだ……また、否定されることが……」
「……葛城さん」
「だが……父は……おれを否定しなかった。おれに……謝ってくれたんだ。
もちろん簡単には許せない……とおれは言ったんだ。
“当然だ”と、父は全面的に非を認めて……償うと」
その手が、微かに震えていて……私は無意識に自分の手を重ねてた。
不思議とそれだけで葛城さんの震えは止まる。彼は、言葉を震わせてこう言ってくれた。
「……おまえに叱られて初めて気づいたこともある……と。父とはいろいろと話をしたよ。おそらく生まれて初めてだ。
母や家族とやり直したいと。もちろんおれとも……。
正直、戸惑ったが……おれもいい加減に前に進まねばならないとようやく思えたんだ」
そして、信じられない言葉が聞こえてきた。
「ありがとう、夕夏……おまえのおかげでおれはようやく過去を過去とできそうだ。まだ時間がかかるだろうが……向き合う覚悟ができた。無茶苦茶だが、おまえが動いてくれたからだ」