クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~




「この年で……だが、おれは人間としてやり直したい。父や家族……もちろん友達やたくさんの人間と……」

「はい……」


そう思ってくれたことが、私には何よりも嬉しかった。


それだけで……いい。

私の恋が実らなくても、葛城さんのそばにいられなくても。彼が前に進む決意をした……それで彼がしあわせになれるなら。


「よかった……しあわせに、なってください……いいえ、あなたならきっとしあわせになれます」


穏やかな気持ちでそう言うと、なぜか不機嫌な声が後ろから聞こえた。


「おれが、いつおまえを手放すと言った?」

「え?」

「おれは……おまえともやり直したい」

「……私と?」


何を言いたいのかわからなくて肩越しに振り向こうとすれば、彼の眼鏡無しの顔が近くて心臓が跳ねる。


強い決意と意地を感じさせる茶色い瞳が、まっすぐに私を射抜いた。


「……おれたちは……出逢いから間違っていた」


葛城さんの悔恨を滲ませた声が、静かな室内に響く。心底悔いる様子に、私はすぐに否定も肯定もできなかった。



< 244 / 280 >

この作品をシェア

pagetop