クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~



今、私がいるのはSS商事本社の営業事務課。10日ほど前にダメ元で面接を受けたのだけど、奇跡的に採用していただけて。1週間前から働き始めた。


けれど、自分でも不思議に思う。面接の控え室で見た十人ほどの応募者はスーツをビシッと着こなして、少なからず自信があるように見えた。

きっと最低でも短大卒の学歴や数々の資格を持っているはず。対人スキルも教養も段違いだろうに、なぜ高卒でパソコンの民間資格しかないような私が採用されたのだろうって。


とはいえ、現に採用されたのが私だけというのが現実。せっかく期待をいただけたなら、それに応えられるように頑張らないと!なんて思う。


初めて出社してから1週間経ち、少しずつ周りに慣れてきた。とはいえもともと対人スキルが低い私は未だに所属メンバーの顔と名前が一致しない。
葛城課長は当然大丈夫としても、自己紹介されてもすぐに記憶出来なくて焦った。


自分の記憶力の無さはどうしようもなくて、学生時代はようやく顔と名前が憶えられた時にはすぐクラス替えという悪循環で、なかなか親しい人が出来なかった。


社会人になってもそんなことじゃダメだ、と私は自己紹介された時のことをなるべく思い出しながら密かにメモ帳を作ってる。

加藤さんの名前は加藤 陽介(かとう ようすけ)。名は体を表すという通りに、陽気で朗らかな話し易いひと。確か東京の大学出だけど、就職を機に地元に戻ってきた。


葛城課長以外に初めて私に気を掛けて下さった人でもあった。

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