クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
「………」
「………」
修正した書類をチェックしていただくため、再度葛城課長の前に立つ。書類提出は基本的に社内メールで行うけれど、新人は念のため紙に印刷して上司に渡すことになっていた。
何度も何度もミスが無いか確認したけれど、目の前にいる葛城課長の眉間のシワは深くなるばかり。ノンフレームのメガネはディスプレイの光を反射して、彼の表情が窺えない。
ドキドキしながら汗ばむ両手をお腹の辺りで握りしめていると、パサッと書類が置かれた。
「……いいだろう。このデータを私宛に送ってから昼休みに入りなさい」
「は、はい」
一度だけのダメ出しで済んだことにホッとして、思わず頬を緩め葛城課長にお礼を言った。
「あ、あの。ありがとうございました」
「礼を言われるようなこと等してない」
こちらへ目も向けずに素っ気なく言うけれど、私はそばにある時計を見て慌ててもう一度頭を下げた。
「すみません、お昼休憩をいただきます」
「ああ」
だけど、どうしても気になることがあってすぐその場を動くことができない。
「どうした?早く休憩に行け」
葛城課長がこちらへ目を向けずにそう言ったから、私は思い切ってその疑問を口に出してみようとした。
「あの!課長は……その、お……お昼……」
「昼が終わったら午後イチで会議がある。君には新人研修のプログラムがある以上遅れは許されない。早く行きなさい」
私がその言葉を言い終わらないうちに、冷静そのものの声が被さってきた。
「はい……失礼します」
こちらをチラリとも見ない葛城課長にもう一度頭を下げ、ロッカーへ向かった。