クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
「あら、海斗(かいと)くんはお眠みたいですね、結花さん」
もうひとつのベビーカーを覗き込んだ由利先輩が、顔を綻ばせて赤ちゃんを見守る。
「そうね。海斗は引っ込み思案だけど、やっぱり外が大好きみたいでずいぶんはしゃいでたもの。疲れたんでしょうね」
結花さんは柔らかい笑みで息子の体に掛けている膝掛けをそっと直す。その様子はごく自然で、やっぱりお母さんなんだな……って微笑ましくなった。
旧姓は三辺で今は桜井になった結花さんは、去年の6月に男の子を出産。旦那様の陸さんは若くして総務課課長代理になった。
最初は反発も多かったできちゃった結婚も、浮わついたところがない堅実な生活で。しっかりした完璧な妻の役割を果たす彼女のお陰もあり、今ではちゃんと認められてる。
……こうしてしあわせになった人たちを見ると、寂しいしうらやましいけれど。よかったとも思う。
やっぱり、間近にいる人たちは不幸よりもしあわせな方がいい。
胸に穴が空いたような虚しい気持ちは消えないけれども。
「……で、体調が悪いって? 具体的にどんな感じなの?」
育児の大変さやダンナさんの愚痴とも言えないノロケを聞いた後、結花さんから質問をされたから答える。
「……具体的には特に。ただ、やたら眠くて風邪なのか熱っぽいだけですね。後は……貧血と目眩くらいです」