クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
「君は?」
「え?」
「君の家では飼えないのか?」
「…………」
まさかそう切り返されるとは思わず、返事に窮して視線を落とせば、よく手入れされた高級感のある革靴が視界に入る。雨に濡れてもへたらず、雨粒を弾いてる。よほど素材と手入れがいいんだろうな、とくたびれた自分の安物ヒールを見比べて自嘲した。
きっと、こんな人にはわからないだろうな。私のような人間の惨めさやコンプレックスなんて、と自虐的な想いに駆られ、気がつけばとんでもないことを口走ってた。
「私は……無理です、明日も知れない生活なので。アパートが焼けた上に、財布を盗まれて無一文ですから」
言葉を出してしまってから、ハッと我に返って片手で口を塞いだ。俯いていたから男性の表情はわからないけれど、きっと困惑しているに違いない。
顔を見るのが怖くて俯いたままじっとしていると、急に男性が立ち上がる。面倒だと思われて仔犬まで見放されたら――と気が急いて、慌てて立ち上がる。
「あの! せめて仔犬を……お願いします! 私だと本当に何もできないので」
すがるように手のひらに載った仔犬を差し出せば、彼は背を向けて自分の車に行ってしまった。
「……ダメか……ごめんね、ワンちゃん。明日、保護してもらえる場所にいこうね」
たしかここから10kmくらい離れたところに動物保護の施設があったはず。何とか歩いていくしかないと決意したところで、急に青色が降ってきて驚くと。いつの間にかタオルが両手に被さっていた。