漆黒の騎士の燃え滾る恋慕
「エルミド…。これ以上の魔力の疲弊はやめなさい。さもないとおまえの命が危ないわ」

「ほお、お心遣いいただけるとは。しかしひくわけにはいきません。その男を殺し、貴女を手に入れるまでは」

「憐れな王太子エルミド。おまえは独りよがりで冷酷な人間。その暗い心を持つがゆえに強大で恐ろしい魔力を得た。しかし、そんな借り物の力が、なんの拠り所になるというのですか?」

「借り物??」


エルミドは眉をひそめさせた。


「これは珍妙なことを。アンバー様、貴女の『御力』もまた、神から許された借り物ではないですかな!?」

「いいえ。私のこの『力』はけして借り物なのではありません。私の中に生まれる私自身の『力』なのです。
教えてもらったの…いえ、解かったの。『力は与えられるものじゃない、自らが生み出すものなんだ』ってことを」


そう、確実に思い出したのだ。

初めてまばゆい光に包まれたあの日。
天啓を与えられた日だと思っていたあの輝きは、神から借り受けたものではなかったのだ。


『目覚めなさい』


あの尊き声は、力を貸し与えたことを通告するものではなかったのだ。
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