漆黒の騎士の燃え滾る恋慕
「私はそうして、今までふるっていた『力』の正体を知りました。そしてその願いがある限り、これからも大切なもののために生きていたい…。
ですからどうか、今一度、私をむかえてくださいませんのか。
『聖乙女』としてでなくてもいい…ちっぽけな小娘と貶められてもいい…。大切なものがあるこの国に、どうか私を帰らせてください」


ひざまずいて深々と頭を垂れた姿に兵たちは息をのみ、静まり返った。


「それはこっちの台詞です…!『聖乙女』さま、どうか戻って来てください…!」


一人が声あげた。
すると他の兵も続いて声を上げる。「アンバー様は俺たちの女神だ」「どうか戻って来てください」「これからも俺たちをお守りください」―――。


「ちょっと待てよ!守られるだけでいいのか!?」


だが、盛り上がりを制すように、一人が声あげた。アンバーに魔球の脅威から救われた兵のひとりだった。


「アンバー様おひとりに背負わせていいのか!?大切なものを守るために、俺たち自身も考えを改めなければならないんじゃないのか?」


深く受け止めたように口ごもる兵たち。
その脳裏には、先ほどファシアスが投げ掛けた問いが残っていたのだった。


『守られてばかりでいいのか?』

『大切なものは自分で守らなければならないんじゃないのか?』


「そうだ、俺たちだってやらなくちゃ」
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