漆黒の騎士の燃え滾る恋慕
王都に戻ったファシアスとアンバーは、共に戻った兵たちが証言者となりエルミドの真実などを口裏を合わせて誰一人たがわず発言したことにより、すぐに捕えられることはなく、いったん預かりの身となった。

その後、エルミドの居室から魔力に関する書物や、悪魔と契約を取り交わしたような痕跡や魔道具が残る秘密部屋が見つかったことにより、むしろアンバーはその被害者としていたわられ、ファシアスはその窮地を救った英雄として、ますます国内からの人気を獲得した。


エルミドの死は民には雹雨の際の不慮の事故としてつたえられ、形式的な服喪の儀が行われた。
その罪は王族のプライドに傷をつけたことにより最高禁忌の扱いとなり、服喪の儀が行われた後は、その汚名を忘れようとするかのごとく立太子問題で王宮は慌ただしくなった。

だがそれもほんの一瞬の騒ぎで、最終的にはエルミドの弟であるアーロンが継ぐことになった。
アーロンはエルミドとちがい、いささか思慮にかけるところはあるが、なによりも明るくやさしく国民からも人気があった。努力すればよい王になるだろうと期待されている。アーロンも突然の立太子に最初は戸惑ったようだが、持ち前の前向き思考で王政もろもろの勉学に励んでいる。

すべてが平和な日常に戻ったのだった。
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