漆黒の騎士の燃え滾る恋慕
「気にならないわ。血の匂いなんてへっちゃらよ。…でも…」


アンバーは重苦しげに言葉を濁した。
ファシアスにはその続きが十分解かっていた。


でも、もう今後会うことは難しい。


解かっていることだ。
ファシアス自身も、もうずっと前からこうして宮に入ることに後ろめたさを感じていた。
本来ファシアスのような血や外気の穢れに晒されている人間は、この宮に近づくことすら禁忌なのだ。だからこの先スファラトとの緊張が高まり続けて、もっと前線に居続けることが多くなったら―――アンバーとはもう二度と会えなくなるだろう。


(そうなった時、俺はどうなってしまうんだろうな)


想像するだけで苦しい。


(きっと、片腕を失うより辛いだろうな)


そう思って、もはや自嘲するしかなかった。
ファシアスはアンバーを愛してしまっていた。


(俺はつくづく愚か者だ。すべての国民のものである『聖乙女』を独り占めしたくて、たまらないんだから…)
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