漆黒の騎士の燃え滾る恋慕
(そんな…!?)


アンバーは咄嗟にその場に膝をつき祈った。一心に『御力』を込め、雲に『引け』と命じた。
全身から『御力』が光となって溢れ、呼びかけるように空へ舞い上がる。だがそれきり、光は群雲の影に塗りつぶされるようにかすむだけだった。アンバーの祈りには聞く耳を持たぬように、雲はいっそう厚みを増し続けていく。


(『御力』が、通じない…?どうして…??)


『御力』が弱まった感覚はない。朝だって禊明けの『御力』は研ぎ澄まされていたのに…。
こんな事態は初めてだった。アンバーの心も不安に侵食され始める。
よりによって『聖乙女』を崇める祭典の今日に…まるで、『聖乙女』であることを否定されているようだ―――。


(…神は…私を疎んじていらっしゃるの…?)


不安は重く増していく。まるで罪を問われるように、アンバーの心にじわじわと覆い被さっていく。


(やはり…あの者と会うことを快く思われてなかったのですか…神よ…)


ファシアス。
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