漆黒の騎士の燃え滾る恋慕
エルミドは芝居がかったように大袈裟に驚いてみせた。


「とうに自覚しているのではないですか?貴女がこの恐るべき事態を退けられないのは、貴女にその資格がないから。つまり、穢れているから、と」

「…私が穢れて…無礼者っ!」


アンバーは叫んだ。
天啓を受けてからずっと国のため民のため『聖乙女』たらんとひたすらに『御力』を高めてきた身にとって、エルミドのこの言葉はあまりに冷酷で残酷なものだった。しかし、


「私に向かってそのような口をきけるのも今のうちですよ」


エルミドはにたりと不気味に笑うだけだった。傷ついたアンバーを楽しむように。
自分の後ろに影のように控えていた近衛兵に顎をしゃくり、ぞんざいに命じる。


「この女を捕えろ」


近衛兵たちは機敏に動いてアンバーの両腕を拘束した。あまりの早さ、あまりの事態にアンバーは声も出ない。
細腕を締め上げる兵たちの力は強かった。まるで罪人を締め上げるように容赦なく。


「離しなさい…!私を誰と心得るか!?」


虚勢を張るものの、その声は震えていた。


(どうしてこんなことに?いったいなにが起きているの…!?)


困惑するアンバーにエルミドが高々と宣告した。


「『聖乙女』アンバー。あなたを国家反逆の罪で拘束する」





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