漆黒の騎士の燃え滾る恋慕
その力を借りるには、強力な負の力を糧としなければならない。その身に悪魔が好む欲望、独善、排他心といったありとあらゆる負の感情を住まわせないといけない。ゆえに魔力そのもののみならず、魔力を得た人間も危険人物として忌むべき存在とみなされる…がまさかその人物が、王族に現れるとは…。


「おぞましい…将来国の上に立つ者が魔力を取り込むなど…。貴方はこの国の民を滅びに導くおつもりか」

「民?」


くく、とエルミドは耳障りな笑い声を発した。


「そんなもの貴女に比べたら微々たるもの。生まれては消えるだけの存在など、取るに足りない虫けらと同じだ」

「な…!貴方は…それでも王族か?王族とは民あってこその存在。なによりも慈しみ守るべきものとして想わなければならないというのに…!」

「人のことが言えるのですかな?貴女に。御力を振るうにたる清らかさを保つよりも、あの男と会うこと優先させた貴女に」

「…!」

「あの男と会い続けていれば、いつか今日のように民を守れなくなる日が訪れると解かっていたのではないですか?そのような貴女に、私を断罪する資格がありますか」

「……」

「…私は、貴女をお救いしたかったのです」
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