君にまっすぐ
「孝俊さん、田中室長と昔からの知り合いなんですね。」

あかりの言葉に運転席に座り赤信号を見つめていた孝俊は驚いて助手席を振り向く。

「どこでそれを?」

「室長自身がおっしゃってましたよ?」

田中が武堂親子と繋がりがあることは隠されているのにどういうつもりだと孝俊は内心腹を立てる。
それに、子供の頃の変な話をされても困る。

「あいつは他に何か言ってたか?」

クスクスと思い出し笑いを始めるあかりに田中が何をいったのかと気持ちが焦る。

「ぼ…」

「ぼ?」

「坊っちゃん、と。」

あはは、とついに声を上げて笑い出したあかりを見て孝俊は頭を抱えた。
田中のやつ、何を考えてやがる!

「子供の頃からちょっと知り合いで。おい、もう笑うのやめろ。」

ちょっと苛ついた感情を表に出し、あかりを制止する。

「室長が坊っちゃんと言ってるのを聞いたときも爆笑してしまって。すみません、笑ってしまって。」

「おい、そのにやけ顔全然悪いと思ってないだろ!田中のやつ、もう呼ぶのはやめろって言ってるのにまだまだだとか言っていつまでもそう呼びやがる。」

「きっと室長にとっては子供の頃のままの存在なんですね。それだけかわいいってことですよ。」

笑い声は止まったが表情はまだ笑っているあかりがフォローになっていないフォローをする。

「おい、田中と俺が知り合いだって誰にもいってないよな?」

「はい。」

「それ、だいたいは機密事項だから誰にも言うんじゃないぞ。」

「え?そんなこと私に漏れちゃってよかったんですか?室長、迂闊なことなんてしないのに。」

「あぁ、あいつは迂闊なことはしない。だから、あいつがあかりに話したってことはそれだけ信頼されてるってことだろう。」

「そうなんですかね?絶対に他には話さないので安心してください。でも、室長と孝俊さんが話しているところ見てしまったら、笑ってしまうかもしれない…!」

今度は変なことを気にして焦り始めたあかりに孝俊は告げる。

「あかり、坊っちゃんのことはもう忘れろ。」
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