君にまっすぐ
彼女の住むマンションの前に車を止める。

「君との付き合いも楽しかったよ。でもこれ以上会うと情が出てきてしまう。だから今日でおしまいにしよう。」

孝俊にとって一番の笑顔で微笑みかける。
彼女にとっては、寝耳に水だ。

「え、ちょっと待ってよ。そんな、まだいいでしょう？」

「いや、今別れておくほうがお互いにとっていいと思うんだ。情が出ると別れるのが辛くなる。」

「私に愛情を向けてくれるなら、孝俊さんのために何でもできるわ。私、孝俊さんの本当の彼女になりたいの。」

彼女が作ったような泣き笑い顔を向けるが、孝俊にとっては失笑モノだ。

「それ、本気で言ってるの？約束、違うよね？」

急に刺すような厳しい視線を向けてくる孝俊におののく彼女が小刻みに震えだした。

「あ、冗談よ、冗談。孝俊さんが終わりと言った時がお別れの時という約束を忘れたわけじゃないわ。ただ１ヶ月ぐらいだと言っていたから、少し早くて動揺してしまったの。」

「もうすぐ１ヶ月になるだろう？今までありがとう。これ、記念に。」

孝俊は彼女に有無を言わせないような笑顔でもう一度微笑み、車のサイドポケットに幾つかストックしてある彼女たちへのプレゼントを差し出した。
彼女は何とかにっこりと笑顔を作り、ありがとうと告げながらプレゼントを受け取るとそそくさと車を降りていった。

そういえば、さっきの彼女の名前ははるみだったか、はるなだったかどっちだったかなと思い浮かんだものの、もう必要ないかと意識を切り替え、孝俊は再度B.C.square TOKYOを目指し車を走らせた。
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