君にまっすぐ
彼女が俺の腕に絡まりながら一緒に地下駐車場まで降りる。
B.C.square TOKYOならではのセキュリティの高い地下駐車場の中でさらに会員のアッパークラスは車庫付きの駐車場を利用できる。
それを管理している管理人が俺たちに気付いて駆け寄って来る。

「おはようございます。ただいまお開けいたしますので少々お待ちください。」

彼女が俺に更に寄り耳打ちしてくる。

「あの子、やっぱり孝俊さんに気があるのね。駐車場の管理人があなたに夢中になったってどうしようもないのにね。毎日会えるからって舞い上がってるのかしら。」

クスっと囁く彼女の言葉に、今日でお別れなのに舞い上がってるのはお前だよと呆れるが、そうだねと適当に相槌を打つ。

そもそもこの彼女よりも孝俊の関心は駐車場管理人への方が高い。
名前は森山田あかり、彼女が管理人になった時に素性は確かめてある。
彼女の言うとおり、この森山田あかりとかいう女は孝俊に惚れているのだろう。
彼女の孝俊をとらえた時の表情、瞳がそれを物語っている。
笑顔なのはもちろんだが、会えて嬉しい、早く会いたかったと言わんばかりのメロメロの瞳が真っ直ぐ向けられる。
もちろん、ここB.C.square TOKYOでアッパークラス担当の管理人なだけあって所作や言葉遣いは丁寧だが、表情が隠しきれていない。

この笑顔がなんとも印象深く、孝俊もやや興味を引かれてしまう。
彼女とこのあと別れたあとは、たまにはこういうタイプもいいかもしれない。
今度の1ヶ月はこの娘で楽しもうと思いながら孝俊は車を発車させた。
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