君にまっすぐ
そのまま暗くなっても走り続けた車は高台に着いた。
フロントガラスからは夜景が見渡せる。

「よし、ここでちょっと話をしてもいいかな?」

「はい。あの、婚約を解消したって本当ですか?」

「あぁ。」

「それって大丈夫なんですか?もしかして私のせいだなんてことはないですよね?」

「もちろん大丈夫だよ。あかりのせいでもない。いや?やっぱりあかりのせいかも?」

孝俊の言葉にあかりの顔がさっと青ざめる。

「申し訳ありません。私婚約者の方に謝りに行かないと。」

孝俊は頭を下げるあかりの肩に触れ、顔を上げさせる。

「そういうことじゃないよ。あかりのせいじゃなくて、あかりのおかげって言ったほうがいいな。」

「おかげ、ですか?」

「そう。だいたい謝りに行っても感謝されるだけだと思うよ?」

あかりを見つめる孝俊の顔は楽しそうに笑っている。

「彼女にもずっと付き合っているパートナーがいたからね。その人との結婚も決まったらしいし。」

「そう、なんですか?」

「だから、利害関係でしか繋がっていない関係だって言っただろ?そもそも利害関係すらなかったも同然なんだけどな。母親しか繋がってなかったわ。」

笑う孝俊にあかりは訳がわからず首を傾げるしかない。

「政略結婚だと思っていたのは俺だけだったんだ。俺は武堂家に生まれたからには政略結婚があたりまえだと思い込んでで、言われるがままに流されていただけだ。」

黙って話を聞いているあかりを真剣な眼差しで孝俊は見つめ話を続ける。

「あかり、そんな俺を変えてくれたのは君だ。」

「私、ですか?何もしてませんよ?」

「あかりは何もしているつもりはなかったかもしれないが、あかりの俺への影響力はすさまじい。あかりの正直でまっすぐであたたかい心が俺の凍っていた心を溶かしたんだ。それに、ビンタもしてくれたしね。」

「あ、あれは!本当にすみませんでした。」

ビンタのことを思い出し、慌てて謝罪する。

「謝らないで。あれは叩かれて当然だったから。あれで色々気づくことができたし、行動の原動力にもなった。」
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