次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない
駿介と一緒にパーティーに出ても、私はその時の自分の立場で装いを変える。誰かに言われたわけではない、自分の立ち位置を忘れない為の私自身のケジメ。ミナトの事を誤解させておくのと同じ、気持ちを抑える為の安全装置。

常務秘書として同行する時はビジネススーツ、駿介のパートナーとしてエスコートされる時はパーティードレス。『蔵本文香』が求められているんじゃなくて、秘書やパートナーを務める人間が求められているのだと、都度に確認するのだ。駿介も私の区別を理解してくれている。

今日は常務が招待を受けて、私は秘書として同行する。だから勿論、ビジネススーツだ。

勘違いを説明してもらおうと思ったのに、当の駿介が耀子母さんの言葉に同意した。


「今夜のランドホテルの創立記念パーティーの招待状が常務としての俺に届いたのは事実だ。だが、次期当主として出席すると返事を出した。だから、文香は俺のパートナーとして俺にエスコートされるんだ」

「え?でもそんな‥‥」

話が違う。秘書として担当役員に同行するからって来たのに。

納得出来なくて駿介につめ寄ろうとしたら、不意に腕を引かれた。
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