次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない
動きだす気配
「この資料は作り直しだ。今日中に直して持ってこい」

不機嫌な低い声でのダメ出しに、いけないと思いつつ、私もぶすっとした声になってしまう。

「かしこまりました」

差し出された書類を受け取って、さっさと常務室を出た私は閉まった扉に向かってべーっと舌を出した。

「なーに?文香ちゃん、子供みたいよ」

背後から聞こえたクスクス笑いに振り返ると、楽しそうに幸恵さんがこちらを見ている。

「だって駿介さん、理不尽なんですもん」

ぷぅっと頬を膨らませて席に戻る。ホント、理不尽だと思うけど仕事だ、午前中いっぱいかけて作った資料を作り直さないと。

「で?理不尽の理由、心当たりあるんでしょ?」

「まぁ、一応‥‥」

そこを突かれるとイタい。一応どころか、完全に心当たりがある。


パーティでレストルームに篭ったすえ、私は結局逃亡したのだ。
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