次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない
しかも体調が悪いから先に帰る、との駿介への伝言をホテルのスタッフに頼んで。

直接言えば、心配した駿介が一緒に帰ると言い出すのは確実だったし、言付けて帰ったのは私なりの気遣い。でも、それを駿介が気に入らないのもまた、分かっていた。

当然、駿介は納得しなくて。木曜日になった今日までずーっと不機嫌だ。

「理由分かってるなら、さっさと謝っちゃえば?駿介さん、根に持つタイプじゃないんだし」

「それはそうなんですけど‥‥ついでに聞いて欲しくない質問もされそうで」

実は夏希さんのと事を報告されるのが怖くて、月曜日に出社するまで、駿介からの電話に出ないのは勿論、折り返しもしなかったのだ。
仕事の用事だと困るから、タイミングを外してメールはしたけど。

「あらあら、複雑なのね。なにか私に出来ることあるかしら?」

「ありがとうございます、でも大丈夫ですよ?そのうちほとぼりがさめて‥‥‥あっ!」

「何?何か私にして欲しいこと浮かんだ?」

「ーーーあの、岡崎取締役にお見合い頼んでもらえませんか?」

迷ったすえの言葉に幸恵さんが動きを止めた。びっくりし過ぎたらしい。

「お見合いって本気!?そんな事したら、余計に駿介さん、ヘソ曲げちゃわない?」
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