次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない
腰を浮かせたまま、動きを止めた私に追い打ちをかけるように嘲る言葉が続く。

「ずっと教えてあげてたのに、私の忠告を真剣に受け取らないから。勘違いした身の程知らずほど愚かな者はいないのよ」

「‥‥‥」

「ええ、そう。はっきり言えば、私はあなたを好きではないわ。大した努力もせず、与えられた幸運を有効活用する事もしない、愚か者ですもの。でも敏彦さんが気に入ってるなら、母親として息子の幸せを応援するわ」

きっぱりと言い切ったその表情に、なぜか清々しさを感じた。

きっと相手がどうしたいか、相手にどう思われるか、なんてちっとも気にしないのだろう。ただ、自分の望む結果にする為に発言して、行動する。そこには全くぶれはなくて、それが清々しく感じるのだろう。


絶対に私はこの人に勝てない。


決定的な敗北を感じた私は、

「話は終わったわ。さっさと仕事に戻りなさい」

と笑顔でいう睦子叔母に小さく会釈して、その場から逃げた。
< 147 / 217 >

この作品をシェア

pagetop