次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない
倒れる!と来るべき衝撃に目をつむった私の腕をぐっと力強く引っ張り上げる存在に驚いて、目を開いた。

「駿介ーーー」

「っと、危ないな。転んでアザでも作ったら、また母さん達に俺が怒られるんだ。気を付けろよ」

言葉はぶっきらぼうだけど、眼差しは暖かでほんの少しだけど口元を緩めている。

「ほら、立てるか?」

「あ、うん。ありがとう」

腕を掴んだ手はそのまま、もう一方の手で背中を支えられたけれど、触れる体温の熱さに心臓のリズムが上がってしまう。そんな状況じゃないのに、頬が上気するするのが止められない。


「ーー駿介さん、どうしてここに?」

二人の間の空気を敏彦さんの低く不機嫌な声が切り裂いた。

「どうして、とはどういう意味ですか?」

挑むように返した駿介は守るように、私の体を自分の背後に隠した。一分の隙もなくきっちりとスーツを着たその背中は広くて、温かで、全ての心配事が消えるような安心感を与えてくれる。
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