次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない
「もちろん、そのままの意味ですよ。僕は婚約者と食事を楽しんでいたんだ。そこに、まるでデートを邪魔するように入って来られるのは迷惑ですからね」

「ほお、婚約者ですか。で、誰と婚約なさったんですか?」

「だ、だれって勿論、文香に決まってるでしょう!僕は彼女とこうして、食事をしてるんですから!」

どんな言葉にもその余裕を崩さない駿介に焦れた敏彦さんが、大きな声を出した。それはまるで子供が自分の主張を言い張ってるみたいだ。

「それはおかしいですね。文香には別にきちんとした婚約者がいますから」

「はぁっ!?何言ってるんだ!ちゃんと母さんが文香に俺との結婚を承諾させたって‥‥」

「承諾?脅しの間違いじゃないですか?」

ピンッと空気の張り詰めたのが分かった。背中からでも駿介の怒りが伝わってくる。

「言いたい事は沢山ありますが、まず先程の質問にお答えしますよ。今日、睦子叔母さんには本家へ来てもらっています。そこで貴方が文香を呼び出したと聞いて、止めに来たのです。文香が馬鹿な思い込みで自分を犠牲にしようとするのを、ね」



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