次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない
「え、なんで客室階?」

当然、連れて帰られると思っていた。多分、このまま本家に連行されて、説明させられて、いっぱい怒られるんだろうなーって。なのに、どつやらエレベーターは上に向かったようで。
どうしてロビーじゃないんだろう?

「話は入ってからだ」

私の質問をスルーして駿介が廊下の突き当たりの扉を開けた。ランドホテルの一般客室より大きくて重厚な扉だ。

「ねぇこの扉って‥‥‥わぁっ!」

客室グレードを聞くことを中断して、歓声が出てしまった。

真っ直ぐに目に飛び込んできたアンティークの家具たちと煌めくシャンデリア。それらに惹かれてフラフラと室内を進めば、眼下に広がる美しい夜景。

「ここって‥‥‥」

数年前の大改装した時の内覧会に、駿介のお供できた事がある。このホテルで一番の‥‥

「そう、プレデンシャルスィートだ」

教えてくれた駿介の口調は相変わらず。その不機嫌さに疑問はもったけれど、目の前のお部屋の素晴らしさに、そちらを優先してしまった。
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