次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない
内覧会の時は沢山のお客様をお招きしていたし、駿介はホスト側のだったから私もお客様の対応に追われて、ゆっくり見学できなかったのだ。

でもヨーロッパアンティークで統一された空間は私の好みのど真ん中で、どこを見てもため息が出るほど素敵。きっと見学するだけで一時間以上はかかってしまうだろう。

部屋中歩き回って感嘆の声を出しながら、ふっと笑いが込み上げてきた。さっきまで敏彦さんとの将来を考えてガタガタ震えていたのに、こんなに楽しんでいるなんて。
自分でも現金だと笑ってしまう。

「ったく、分かってるのか?男とホテルの部屋に二人っきりだって言うのに、まったく危機感がない」

「え?何か言った?」

部屋を見るのに夢中で駿介の言葉を聞き逃してしまった。

「別に。ついさっきレストランで泣きそうになってたとは思えないなって言っただけだ」

「へへっ。ホントだよね‥‥‥」

改めて人から言われると、流石に自分の能天気さか恥ずかしくなった。

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