次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない
駿介の腕の中に落ちたとはいえ、互いの気持ちを確認したのはついさっきだ。大人の恋愛ではアリなのかもしれないが、男性経験のない私には展開が急すぎてついていけない。

なんとか考え直してもらって、もっとゆっくりな初心者ペースで進めてもらえないだろうか。そんな願いを伝えるべく開いた唇は、チュッというリップ音をさせて塞がれた。

「否はなしだ、文香。大丈夫、ゆっくりじっくり、優しく愛してやるよ」

直視したこっちが照れてしまうほど甘い視線で告げる駿介に敵うわけがない。真っ赤になった顔を駿介の胸に押し付けて隠している間に、そのままお姫様抱っこでソファから抱き上げられる。

「シャワーは後で一緒に入ろう」

「へっ!?」

満足げに笑う駿介に連行され、そっとベッドに降ろされた時、視線が絡み合った。

強くて優しくて、でも、ぎゅっと抱き締めたくなる愛しいひと。ずっとこうして触れ合いたくて、でも触れ合えないと諦めていたひと。誰よりも何よりも幸せを願う、大切なひと。

「なに?」

< 191 / 217 >

この作品をシェア

pagetop